【当社の対策実績付き】レピュテーションリスクとは|事例や発生原因&対策方法を詳しく解説
レピュテーションリスクとは、悪い評判が広まることにより企業の価値や収益性、信頼性に悪影響を及ぼすリスクを指します。近年、SNSやスマートフォンの普及に伴い、企業の不祥事やサービス品質の低下はすぐに世間へ広まる時代となり、企業の倒産や巨額損失の発生事例も増えています。これからの時代、企業が安定して事業活動を続けるために「レピュテーションリスク」の管理は最優先課題の1つと言えます。
本記事では、企業の担当者や経営者向けにレピュテーションリスクの意味や発生原因、事前に回避する対策、表面化した際の対処法について詳しく解説します。
レピュテーションリスクとは何か
レピュテーションリスク(Reputation Risk)は、2010年代後半から注目されるようになった言葉ですが、どのようなリスクを指し、なぜ重要視されるようになったのかを解説します。
レピュテーションリスクの意味
レピュテーションリスク(Reputation Risk)とは、企業や個人のネガティブな評判が世間に広まった結果、信用やブランド価値の低下を招き、経営損失に繋がるリスクを指します。つまり「評判による損失の可能性」とも言えます。売上の減少や信頼回復コストの増大、ステークホルダーの信頼喪失など、深刻な経営問題に直結するので、事前の対策が重要です。
特にレピュテーションリスクの危険性は、ネガティブな投稿の数に比例して高まる傾向が強く、潜在フェーズ(上図)の段階で発生源となる投稿を潰しておく必要があります。SNSやネットの普及により個人が企業の経営リスクに直接影響を与えれるようになった昨今、悪い評判が広がらないための対策や管理は急務となりました。
レピュテーションリスクの管理が重要視される理由
レピュテーションリスクの管理が重要視されるようになった理由には、誰でも気軽に情報配信ができる「SNSとスマートフォンの普及」が挙げられます。近年ネガティブな情報は瞬時に広まり、企業が「炎上」状態に陥るケースが増加しています。企業は自社のネガティブな情報を配信されることで、売上の減少や顧客離れ、信頼喪失に繋がる危険性が高く、一度失われた信頼を回復するにも、多大なコストや時間がかかります。特にネット上のネガティブな評判は、良い評判よりも拡散性が高く、拡散スピードも速いので、企業にはネット上の監視体制や評判に対する事前対策がより一層求められています。
経済産業省の「先進企業から学ぶ事業リスクマネジメント 」では、11の経営リスクを紹介していますが、「レピュテーションリスク」の重要性は上位5番目に認識されています。
レピュテーションリスクの事例
近年、レピュテーションリスクが表面化した結果、甚大な被害に遭う企業が後を絶ちません。事業規模や業種に関わらず、すべての事業者に共通する経営リスクなので、過去の事例をもとに発生状況の例を説明します。
衣料品業界|風評被害によるレピュテーションリスクの事例
某衣料品企業が販売する服の素材に、中国新疆ウイグル自治区で作られた綿花を使用している疑いがあるとして米国税関当局が服の輸入を差し止めました。某衣料品企業は、「人権侵害には問題のない綿花のみを使用している」と主張しましたが、差し止めの解除要請は拒否されました。本件は、売上に影響しただけなく、風評被害のリスクが大きく、人権団体も声を上げることになりました。
中国自治区の新疆ウイグル自治区は、ウイグル族の強制労働で問題になっており同年3月に、欧米諸国が経済制裁を発動し、ウイグル産の綿花は使用しないと表明しました。
出版業界|個人情報漏洩によるレピュテーションリスクの事例
某大手メディアはランサムウェア攻撃を受け、従業員や顧客の情報250,000件以上が流出しました。本事件は個人情報を盗み、身代金を要求する「情報流出型」に分類され、一部はダークウェブを通じて漏洩しています。個人情報漏洩による企業イメージの低下に加えて書籍販売の減少や、ネットサービスの一時停止などで甚大な被害が出ています。
本事件は、サイバー攻撃によりレピュテーションリスクが表面化した事例ですが、今後情報化社会が進むにつれて、すべての企業によって他人事ではありません。この事件を教訓にして、自社のセキュリティ対策を見直す必要性が強調さています。
レピュテーションリスクの発生原因と表面化経路
レピュテーションリスクの管理体制や対策方法を検討する際に「発生原因の種類」と「表面化に至る経路」を理解しておくことが重要です。仮に自社の従業員が不正行為を働いていても表面化していない以上、レピュテーション(評判)に関わるリスクはあれど、直接的な被害はありません。
このようにレピュテーションリスクは発生原因と表面化経路を切り分けて考えることで、より適切に管理できます。
・ネット上の投稿(SNS等)
・内部告発
・サイバー攻撃
・政府や行政の定期調査
レピュテーションリスクの被害は、主に上記4つの経路によって表面化します。そして以下6種類の原因が直接的な被害を引き起こすことになります。
原因1|劣悪な労働環境
劣悪な労働環境の被害者は、正社員や派遣社員、パートを含む全従業員なので、レピュテーションリスクの表面化に繋がりやすい原因の1つです。
劣悪な労働環境の例:
・労働基準法違反(長時間労働、賃金未払い、安全基準の欠如)
・ハラスメント(職場での権力を利用した不適切な行為)
・差別的な待遇(性別、人種、宗教、年齢などに基づく不公平な扱い)
劣悪な労働環境は自社で改善できる要素が大きく、対策次第ではレピュテーションリスクを限りなくゼロに近づけることができます。
原因2|製品・サービスの品質低下
製品やサービスの品質低下は、顧客が主体で表面化することが多く、レピュテーションリスクの損失も大きくなる傾向にあります。
製品・サービスの品質低下の例:
・品質管理の怠慢(品質自体の低下、品質のばらつき、費用対効果の悪化)
・安全基準違反(不良品の出荷や安全性の無視)
・虚偽表示や誤誘導(実際の内容の機能と異なる情報を顧客に提供)
品質低下によるレピュテーションリスクの被害は、自社の業務怠慢以外に、顧客の主観的な批評も含むので完全に対策することは困難です。
原因3|法令・コンプライアンス違反
法令やコンプライアンス違反は、業務停止や行政処分、賠償責任など公になる可能性が高く、レピュテーションリスクの損失は深刻です。
法令・コンプライアンス違反の例:
・労働法や環境法の違反(職場の安全基準や環境保護基準を無視した行為)
・独占禁止法の違反(価格カルテルや競争を妨げる行為)
・データプライバシーの侵害(顧客や従業員の個人情報を不正に利用または管理)
法令やコンプライアンス違反によるレピュテーションリスクは、自社や外部顧問、弁護士などと連携して対策を進める必要があります。
原因4|不正財務・会計処理
企業の不正会計問題は、ステークホルダー(顧客・仕入先・株主など)全体に影響する可能性が高く、レピュテーションリスクによる倒産や買収も現実に発生しています。
不正財務・会計処理の例:
・架空取引や収益の虚偽計上(売上を過大に報告したり、費用を過小に計上する行為)
・資金の横領や私的流用(経営陣や社員が会社の資金を不正に使用するケース)
・贈収賄や裏金(特定の取引先や政府機関への不正な金銭の授受)
不正会計によるレピュテーションリスクの対策は、不正会計の防止対策と同義なので、企業全体で適切な内部統制を整備することが重要です。
原因5|個人・機密情報の漏洩
個人情報や機密情報の漏洩は、企業の信頼喪失や無形資産の損失に繋がる可能性が高く、表面化した場合、迅速な対処が求められます。
個人・機密情報の漏洩例:
・顧客データの流出(不正アクセスやサイバー攻撃により流出)
・従業員データの不適切な管理(従業員の人事情報が第三者に漏れる)
・製品開発情報の流出(新製品の設計図や技術仕様書が競合他社に渡る)
情報漏洩の経路は、外部からのサイバー攻撃をイメージしがちですが、実は従業員の過失や人為的なミスも多数発生しています。情報漏洩によるレピュテーションリスクの対策は、まず情報の取り扱いに関する規定を作り、推進することから始めます。
原因6|事実と異なる風評被害
近年、ネット上の風評被害によるレピュテーションリスクは急速に高まっています。ネットの風評被害は事実に関わらず、閲覧者の興味関心に依存する傾向が強く、表面化すると企業がコントロールするのは難しくなります。
風評被害の例:
・虚偽情報の拡散(事実無根の情報が拡散され、企業イメージを損なう)
・ネット上のレビュー操作(掲示板や口コミサイトのレビューを低評価に落とす)
・検索エンジンのサジェスト欄にネガティブワードが出現(関心の強いワードは自然に表示される)
ネット上の風評被害は倒産や巨額損失に繋がる危険性があるので、事前の対策が不可欠です。しかし、風評被害は専門性が高く、自社で対策するのは難しい側面もあるので、風評被害対策の専門業者に相談することをおすすめします。
レピュテーションリスクが企業に及ぼす3つの損失
レピュテーションリスクが表面化することで発生し得る損失はおもに以下3つが挙げられます。損失の大小にもよりますが、企業の倒産事例も多発しているので注意が必要です。
①収益性の損失
レピュテーションリスクが表面化したとき、企業収益の損失に影響します。信頼喪失による顧客離れや価格競争力の減退は売上の減少を招きます。一方、信頼回復を目的とした広告宣伝費や社内整備にかかるコストの増大など、企業の利益にも大きな損失が発生します。
収益性の損失例:
2019年2月、大手回転寿司チェーンのアルバイト店員が魚をゴミ箱に捨て、それをまな板に戻そうとする動画が拡散され、1日で時価総額約27億円の損失が発生。
②企業価値の損失
レピュテーションリスクの損失は、企業やブランド価値に悪影響を及ぼします。企業の価値が低下すると株主や投資家からの信頼を失い、株価の暴落やM&Aのリスクが高まります。また、企業イメージの低下は自社のみの問題に留まらず、サプライチェーンや業界全体に影響が出ることもあります。
企業価値の損失例:
2010年、日本の某大手自動車メーカは、世界中で約1,000万台の大規模リコールを実施。本件は某企業のイメージに留まらず、「日本製」全体のイメージに影響が出た。
③採用機会の損失
レピュテーションリスクは、採用機会の損失に繋がります。主に労働環境や職場文化、人種差別、経営陣の問題行動が原因で引き起こされることが多く、企業は優秀な人材確保や新規採用が難しくなります。
採用機会の損失例:
台湾に本社を構える電子機器メーカーは、劣悪な労働環境や従業員の自殺が報じられ、「働きたくない企業」として認知を集め、国内外問わず労働力の確保が困難になった。
レピュテーションリスクへの基礎対策
レピュテーションリスクが表面化すると各方面に甚大な損失が予測されるので、事前に適切な対策を取ることが重要です。特に以下4つは、レピュテーションリスクの基礎対策として考えられています。
①社員教育・社内整備の徹底
レピュテーションリスク対策の1つ目は、社内規定や業務マニュアルを整備して全従業員が会社のルールに従い、適切に行動することです。具体的な対策手順は以下のとおりです。
手順1. 各種マニュアルの整備
手順2. 社員教育の徹底
手順3. 定期チェックとマニュアルの改善
さまざまな状況下のマニュアルを整備し、社内教育を徹底することで全従業員の行動や判断に一貫性を持たせることができます。ただ、最初から完璧なマニュアルを作成することは困難なので、定期的にマニュアルを見直し、継続的に社員教育を実施することが大切です。
②積極的に正確な情報配信を心掛る
レピュテーションリスク対策の2つ目は、正しい情報に基づき積極的に情報配信を行うことです。自社の製品・サービスに関する情報や考え方、取り組みなどを日ごろから開示することでステークホルダーとの信頼関係を築くことができ、仮にネット上で事実無根の風評が流れても情報の信憑性を疑い、誤解されにくくなります。ただし、正確性を欠いた情報や誤認されるような情報配信は逆に不信感を与えるので情報の取り扱いには注意が必要です。
③社内外の関係者調査と管理
レピュテーションリスク対策の3つ目は、自社に関わる従業員や取引先の管理体制を整備しておくことです。従業員に不審な行動を取る人間がいれば過去の経歴や身辺調査の実施、取引先については初回取引の前や定期チェックを実施するなど、人物や組織の管理を徹底します。自社の関係者にレピュテーションリスクが表面化した場合、2次被害に巻き込まれる可能性があるので、社内外の関係者も管理できる体制を整えておきます。
④インターネット情報の監視
レピュテーションリスク対策の4つ目は、ネット上の監視です。インターネット上の悪い評判は拡散スピードが速く、不特定多数の人の目に触れるので、事実かどうかに関わらず興味関心を引く内容なら炎上リスクは高まります。風評被害によるレピュテーションリスクは、日々ネット上を巡回しながら自社に関する評判を見つけ、順次対処していく必要があります。最近はネット上の監視を代行してくれる業者や自動監視ツールも登場しているので、作業の手間を大きく削減できるようになりました。
レピュテーションリスクの事後対応
レピュテーションリスクは、いくら対策しても完全に防ぐことが難しく、表面化した際には冷静かつ迅速に対応することが重要です。特に以下3つに留意しておくことで被害を最小限に抑えることができます。
1.迅速な事実確認・原因究明と情報公開
レピュテーションリスクが表面化したとき、最初に取るべき対応は迅速な事実確認と情報公開です。発生事象の真偽と経緯を確認し、迅速に情報公開することで株主や取引先の信頼喪失や2次被害の可能性を最小限に抑えることができます。その後で詳しい原因の究明と今後の対策を検討します。
2.外部関係者とのコミュニケーション
企業のレピュテーションが毀損すると株主や取引先は不安になります。最悪、株価の暴落や取引先が逃げていくなど、経営全体に大きな損失が発生します。この事態を避けるために、社外の関係者と密にコミュニケーションを取り、最新の状況や進捗を常にアップデートすることが重要です。
3.根拠のない風評被害に関する調査と対処
レピュテーションリスクによる被害が発生したら、いち早くネット上の風評を調査し、対処することで損失の拡大を抑えることができます。特に企業の評判は、不特定多数が閲覧する以下3つのような媒体を重点的に調べます。
①各種SNS
②ネット掲示板・レビューサイト
③検索エンジンのサジェスト欄
また、企業は根拠のない風評被害や誹謗中傷により損失を被った場合、きっちりと法的措置を取って情報を公開することで信頼回復にも繋がります。
当社レピュテーション対策(ORM)の実績
近年、レピュテーション対策・ORM(Online Reputation Management)の重要性が高まる中、専門業者に依頼する企業も増加しています。ネット上の風評は種類や形を変えながら日々進化しており、適切な対策には動向調査や対策方法の研究が不可欠です。当社は10年以上、企業さまの風評被害対策をご支援させていただいていますので、以下に2つほど実績を紹介します。
人材派遣会社|サジェスト欄の風評被害を対策して新卒応募者が増加
風評被害による企業イメージの悪化や採用エントリー減に悩む人材派遣会社の対策事例です。
相談内容
元従業員の不祥事が原因で検索エンジンのサジェスト欄に「パワハラ」や「ブラック」などのネガティブワードが表示されてしまい、企業イメージの悪化を懸念。また採用の応募も減少したという。
対策方法
検索エンジンのサジェスト欄に「事業内容」や「新卒採用」など、一般的なワードを表示させ、ネガティブワードをサジェストの欄外に押し出した。
対策の効果
自社の採用サイトから新卒エントリーが増加。検索エンジンから自社サイトを見つけ、エントリーしてくるユーザーが多かったので、風評被害対策に留まらず、SEO的な効果も発揮した。
検索エンジンのサジェスト欄は、一般的に「よく検索されているワード」という印象を与えやすいので、ネガティブワードが表示されるとブランドイメージの低下につながります。
化粧品会社|SNS上のネガティブ投稿をいち早く察知して改善に成功
レピュテーションリスクを懸念する化粧品会社の相談事例です。
相談内容
X(旧Twitter)やインスタグラムで自社の商品に関する投稿が増えてきており、ネガティブな評判や口コミが気になるようになった。
対策方法
当社のレピュテーションリスク監視ツールを導入することで、ネット上のネガティブ投稿を一元管理。悪質なものにはプラットフォームに削除要請等の対応。
対策の効果
各プラットフォームのネガティブな投稿を早期に発見し、対処できるようになったので、レピュテーションリスクの危険性は大幅に減った。また、ネガティブな投稿を精査し、商品の改善にもつながった。
この化粧品会社の事例は、レピュテーションリスクの対策が危険性を排除するだけなく、商品やサービスの改善にも役立ったという事例です。
レピュテーションリスクまとめ
本記事では、レピュテーションリスクの意味や事例から具体的な対策方法について解説してきました。レピュテーションリスクとは、企業や個人のネガティブな評判が広まることで信用やブランド価値が低下し、経営損失に繋がるリスクを指します。最後に、この記事で説明したレピュテーションリスクの要点についてまとめます。
・表面化に至る可能性はネガティブな投稿数に比例
・ネガティブな評判はポジティブな評判より拡散スピードが速い
・リスク管理は6種類の原因と表面化に至る4経路を切り分けて考える
・主な損失リスクは収益性・企業価値・採用機会の3つ
・日ごろから組織全体でレピュテーションリスクの対策が必要
・完全にリスクを防ぐことは難しいので事後対応も熟知しておく
・ネット上のレピュテーション対策は専門家に依頼する企業が多い
現状、レピュテーションリスクの具体策を整備している企業は少ないように思いますが、経済産業省が重要性を認識している点やレピュテーションリスクの保険が登場している点などを踏まえると、今後確実に企業経営の脅威となります。レピュテーションリスクは今日の今、表面化する可能性があり、明日には経営基盤が傾く危険性すらあります。少しでも気になる方は、当社のようなレピュテーションリスク対策を行っている専門会社にお問い合わせください。