インターネットが企業評価を大きく左右する時代において、ネット上の風評被害や悪評への対策は、もはや危機管理の一部ではなく、経営そのもののテーマになっています。検索結果、口コミサイト、掲示板、SNS、さらには生成AIによる企業評価まで、企業を取り巻く情報環境は年々複雑化しています。

かつては、問題が起きたときに対応すれば良いと考えられていましたが、現在では悪評が出る前から管理するレピュテーションリスク管理という概念に加え、chatGPTなどの生成AIにどう認識されるかを設計することが今後ますます重要になっています。

本コラムでは、

・風評被害が発生する典型的な原因
・従来型の風評被害対策の考え方
・対策を誤った場合のリスク
・生成AI時代に新たに必要となる視点

について、実務ベースで詳しく解説します。

風評被害とは何か

風評被害とは、事実とは異なる情報や、一部だけ切り取られた情報、過度に誇張された評価が拡散されることで、企業やブランドの価値が損なわれる状態を指します。重要なのは、必ずしも完全な嘘でなくても風評被害は成立するという点です。過去の出来事、個人の主観的な体験、匿名掲示板での推測、これらが検索結果や口コミサイトに蓄積されることで、あたかも企業全体の評価であるかのように見えてしまいます。

特にBtoC企業や採用活動を行う企業では、

・問い合わせ数の減少
・成約率の低下
・応募数の激減

といった形で、目に見えるダメージとして現れるため、実際に発生してしまうと企業側が被る被害は非常に大きいものになってしまいます。

企業の悪評が発生する主な場所は、以下に集約されます。

検索エンジンの検索結果

企業名で検索した際に、ネガティブなキーワードや批判的なページが上位表示されるケースです。一度上位に表示されると、長期間にわたり影響を及ぼします。
また、キーワードを入力するときに検索ボックスの下に現れる検索候補キーワード群も、ネガティブなキーワードが現れることが多いため、注視する必要があります。

口コミサイトや掲示板

転職会議やopenworkなどの転職系サイト、アットコスメやPlayストアなどの商品レビュー系サイト、ヤフーファイナンス掲示板などの投資系サイトなど、業界ごとに複数のプラットフォームが存在します。匿名性が高く、感情的な書き込みが残りやすい点が特徴です。

SNS

特にX(旧Twitter)は拡散力が非常に高く、短期間でイメージが悪化し、固定化されやすい媒体です。削除も難しく、スクリーンショットなどで二次拡散されることも少なくありません。
拡散されてしまうと、一つ一つ投稿を削除していくことは現実的ではないため、一次対応を誤らないようにすることが重要です。

ニュースまとめやブログ

個人ブログやまとめ記事が検索結果に残り、事実確認がされないまま引用され続けるケースもあります。運営者とコンタクトを取ることは比較的容易のため、誤った情報などについては、早急に削除依頼などを行い、事態の収拾に努めることがたいせつです。

このように、ネット上には多くの評判リスクが発生する可能性があります。発生する場所によって対処も異なるため、各所を注意深く確認する必要があります。

また悪評に直面した際、多くの企業がやってしまいがちな対応があります。

・感情的に反論する
・無理に削除を要求する
・放置して時間が解決すると考える

これらは短期的には楽に見えますが、中長期的には状況を悪化させる要因になります。特に放置は危険です。なぜなら、検索エンジンや生成AIは、存在している情報を根拠として評価を形成するからです。否定情報が多い状態で放置すると、生成AIにそれが事実として扱われてしまいます。そのため、クリティカルな悪評に対しては早急に対策を講じる必要があります。

正しい風評被害対策の基本設計

風評被害対策は、単なる削除作業ではありません。以下の三層構造で考える必要があります。

①監視

まずは現状を正確に把握することが不可欠です。検索結果、サジェスト、口コミ、掲示板、SNSを常時モニタリングし、どこにどのような情報が存在するのかを把握します。

一つ一つのプラットフォームを見て回るのは手間がかかるため、ネット上の監視ツールの導入を検討することをおすすめします。

②整理

問題となる情報が、

・事実無根なのか
・事実だが過去のものなのか
・誤解を生む表現なのか

を切り分けます。この整理を誤ると、対応方針がブレてしまいます。

③設計

削除が可能なものは削除申請を行い、難しいものに対しては、正しい情報を上書きする設計を行います。ここで重要なのが、検索結果全体をどう構成するかという視点です。削除はあくまで対処療法のため、仮に一部の投稿が消えても、企業に関する情報が少ない状態であれば、再びネガティブな情報が目立つ可能性があります。検索エンジンも生成AIも、情報量と文脈を重視します。そのため、

・公式情報
・第三者視点の記事
・専門的で中立的な解説

を意図的に増やしていく設計が重要となります。

また近年では、企業調査の手段として生成AIを利用する人が急増しています。求職者、取引先、投資家が、検索エンジンではなくchatGPTやGeminiなどの生成AIに企業名を入力し、評価を確認するケースも珍しくありません。生成AIの特徴は、

・検索結果の要約を行う
・複数情報を統合して評価を形成する
・ネガティブな情報を強調しやすい

という点にあります。つまり、検索結果で対策できていても、生成AI向けの設計が不十分だと、AIからは悪い会社として認識されるという事態が起こります。
そのため、検索エンジンだけでなく、生成AIにどう評価されるかという視点でもレピュテーションリスク対策を設計していく必要があります。

生成AIに正しく評価されるためのポイント

生成AI対策において重要なのは、以下の視点です。1つずつ解説していきます。

①信頼性の高い情報源を増やす

生成AIは、単一の情報源をそのまま引用して評価を下すわけではありません。複数の情報源を横断的に参照し、それらの共通点や傾向から企業像を組み立てます。

このとき重要になるのが、どこに書かれている情報なのかという点です。公式サイトの情報は当然参照されますが、それだけでは十分とは言えません。なぜなら、生成AIは公式情報を企業側の主張として捉え、第三者の視点をより重視する傾向があるからです。具体的には、

・専門メディアによる解説記事
・業界特化型メディアでの紹介
・中立的な比較記事やインタビュー記事
・一次情報に基づいた分析コラム

といったコンテンツが、AIの評価材料として強く影響します。逆に言えば、第三者視点の記事が少ない状態で、口コミサイトや掲示板の情報だけが豊富に存在している場合、生成AIはそれらを企業評価の中心に据えてしまいます。そのため、風評被害対策の一環として、正確で専門性のある第三者コンテンツを意図的に増やすことは、AI対策として極めて重要です。これは単なるSEO施策ではなく、AIに与える学習材料の設計と言えます。

②一貫したメッセージを設計する

生成AIは、断片的な情報をそのまま並べるのではなく、それらを統合し、一つのストーリーとして企業像を形成します。ここで問題になるのが、媒体ごとに言っていることが微妙に違うケースです。

公式サイト
顧客第一を掲げている

採用サイト
成果主義を強調している

口コミサイト
評価制度への不満が散見される

このようにメッセージが分散していると、生成AIは矛盾を含んだ評価を出します。結果として、

方針が一貫していない会社
内部と外部で言っていることが違う会社

という認識が形成されやすくなります。これを防ぐためには、

・企業の基本スタンス
・大切にしている価値観
・課題に対する姿勢

を明文化し、それをすべての発信に反映させる必要があります。

重要なのは、きれいな言葉を並べることではありません。実態に即したメッセージであることが、結果的にAI評価を安定させます。生成AIは、同じような表現や文脈が複数の媒体で繰り返し確認できるほど、その内容を事実として扱う傾向があるためです。

③ネガティブ情報への説明責任

生成AI対策で最も誤解されやすいのが、ネガティブな情報は隠すべきだ、という考え方です。

実際には、生成AIは「問題があったかどうか」ではなく、「問題にどう向き合ったか」を重視します。過去にトラブルや炎上があった企業でも、

・原因
・当時の対応
・その後の改善策

が整理され、複数の情報源で確認できる場合、AIはそれを前向きな企業姿勢として評価することがあります。一方で、ネガティブな情報が口コミや掲示板に断片的に存在し、公式な説明や整理された情報が存在しない場合、AIは否定的な情報だけを根拠に評価を形成します。つまり、沈黙は中立ではなく、不利に働くということです。

説明責任を果たすとは、謝罪文を出すことだけを意味しません。背景や文脈を整理し、現在の状況と切り分けて説明することです。これにより、生成AIは過去の問題はあったが、現在は改善されているという評価を行いやすくなります。

まとめ

風評被害対策というと守りの施策と捉えられがちですが、実際にはブランディングと表裏一体です。

・正しい情報を発信する
・企業の姿勢を明確にする
・誤解されにくい情報設計を行う

これらは、結果として営業活動や採用活動を支える資産になります。

風評被害対策は、問題が起きたときだけ行うものではありません。平時から管理し、検索エンジンと生成AIの両方を意識した情報設計を行うことが、これからの企業に求められます。悪評を消すことをゴールにするのではなく、正しく評価され続ける状態をつくることこそが、これからの風評被害対策であり、レピュテーションマネジメントの本質と言えるでしょう。